2007年10月27日(土曜日)

グレンモーレンジ テイスティング・セミナー@画亭瑠屋 (1)

 日吉に画亭瑠屋というバーがある。まだ3、4回しか行ったことはないのだが、今回そこでグレンモーレンジの正規輸入代理店であるヴーヴ・クリコ ジャパンの講師を迎えテイスティング・セミナーを行うという情報を聞きつけ、興味津々で申し込んで今日行って来た。そもそもグレンモーレンジは、2005年にMHD(ディアジオ・モネ・ヘネシー株式会社)の傘下に入っており、その際に日本での正規輸入代理店が同じMHD傘下であるヴーヴ・クリコ ジャパンになった。あの高級・高品質・高価格(爆)の有名シャンパン、ヴーヴ・クリコである。そしてそのMHDのブランディング戦略の影響もあり、先週からグレンモーレンジはラインアップを一新し、ラベルも中身もそれまでとはまったく変わった製品群を打ち出してきた。今回はその新ラインアップのお披露目というわけだ。

 セミナーでは当然グレンモーレンジの歴史や新ラインアップへの思い等も前置きとして色々と語られるわけだが、とりあえずは新旧のラインアップを比べてみよう。旧ラインアップはグレンモーレンジ10年を標準品とし、ウッドフィニッシュ・シリーズと呼ばれた4製品、シェリーウッドフィニッシュ、ポートウッドフィニッシュ、マディラウッドフィニッシュ、そしてバーガンディウッドフィニッシュ、18年、25年というものであった。新では、10年はグレンモーレンジ オリジナルという名称になり、ウッドフィニッシュ・シリーズはエクストラ・マチュードという名称に変更され、ラサンタ(旧シェリーウッド)、キンタ・ルパン(旧ポートウッド)、ネクター・ドール(旧では標準品ではないがソーテルヌウッドフィニッシュに相当)、18年、25年となる。名称をパッと見ただけで、相当変わったんだろうなというのは想像に難くない。

 ではまずは旧10年に相当するオリジナルから。ノージングした瞬間に感じられる、非常に明るく爽やかな柑橘系の香りが第一印象だ。正直、意外だった。グレンモーレンジは実は旧10年は飲んだことがないのだが(苦笑)、その他の製品の印象からはここまで爽やかな柑橘系のイメージがなかったからだ。聞くと、やはりこのオリジナルは10年の後継と言っても10年とは相当味わいが変わっているらしい。10年間バーボン樽熟成のみという手法自体は変わってないのだが、先にこのBLOGでも紹介したアーティザンカスク、あの樽を使った原酒の割合が相当増えているらしい。なるほど言われてみると、このオリジナルで感じられる華やかな柑橘系の香り、そこから感じられる明るい黄色のイメージはあのアーティザンカスクに近い。今日初めて知ったのだが、最近では旧10年でもあのアーティザンカスクで熟成された原酒がある程度入っているのだそうだ。それを初めて100%アーティザンカスク熟成の原酒のみで製品化したのが先の『グレンモーレンジ アーティザンカスク』だったということらしい。

 話は逸れるがこのアーティザンカスク、出してみたら非常に評価が高かったそうで、ヴーヴ・クリコの方に再発を希望する声が大量に届いているそうだ。そして今日もその魅力を知っている受講者数名から再発の要望が上がっていた。確かに、私も素晴らしく美味しいと思ってリピートしてしまったわけなので納得である。話が逸れたついでにもう少し書くと、アーティザンカスクの作成過程で、敢えて樽となる木材を2年もかけて自然乾燥させることにも意味があるそうだ。自然乾燥で樽を乾かすと、その途中過程で雨や風が木材をさらし、その木材の臭みやエグみというものを取ってくれる。それをまだ臭み・エグみが残っている段階で機械乾燥にかけてしまうと、木材に残っている歓迎できない臭みやエグみが残ったまま樽になってしまうので、当然原酒もその影響を受けると説明していた。アーティザンカスク、聞く程に恐ろしいこだわりようである。

 さて、オリジナルに話を戻すと、味わいの方は相変わらずグレンモーレンジらしい麦の風味をしっかりと感じられる質実剛健なものだった。そして何よりも非常に舌触りが滑らかだ。講師の方曰く、これは旧10年は43度で瓶詰めしていたものを、オリジナルは40度に下げたことに由来するとのこと。度数を下げることでアルコールの揮発性の強い刺激を下げ、香りを感じやすくし、そして刺激を抑えることで滑らかな舌触り、テクスチャを実現したとのこと。結果、このオリジナルは非常に華やかで飲みやすいモルトに仕上がっていた。アーティザンカスクで熟成された原酒の割合が増えたことで、全体的なクオリティの底上げも行われていることだろう。素直においしいモルトだ。

 さて次からはラサンタ、キンタ・ルパン、ネクター・ドールのエクストラ・マチュアド、つまりは旧ウッドフィニッシュ・シリーズということになる。このウッドフィニッシュはグレモーレンジが先駆けとなり業界にムーヴメントを作り出した部分でもあるので、そこをここまで大きく変えて来るということは当然作り手の思いも大きいはずだ。ということでまず冷静にラインアップを見てみると、まずエクストラ・マチュードに変わって製品の数が1つ減っていることに気付く。旧は4つ、新は3つ。しかも旧のマディラとバーガンディに相当する製品は新ラインアップにはない。この点についてヴーヴ・クリコの方は各製品をまったく違った個性に仕上げたかったということと、常に高いクオリティを維持するための方策だと説明していた。ぶっちゃけ、マディラとバーガンディについてはこれらの製品を維持していくための高品質の空き樽を、今後も一定量確保し続けるのは難しくなったという一面もあるそうだ。反対にシェリーとルビーポートに関しては、これまで品質がブレやすかったものが、今後は一定の品質のものを望む量だけ確保することができるようになったのだそうだ。それにより、グレンモーレンジの特にシェリーで熟成している製品に関しては、旧とまったく中身や製法を変えていない18年でも以前より品質は向上しているとのこと。まぁ、色々ある。

 そして一番気になる名前の由来だが、これはそれぞれの製品が持つイメージを表す言葉を商品名として選んだのだそうだ。そして、バーで実際に注文を出す際に、例えば「シェリーウッド・フィニッシュをください」と言うのと「ラサンタをください」と言うのと、どちらが注文を出しやすいかという統計分析を取った結果、ラサンタのような愛称がある方が圧倒的に注文が出やすかったという報告結果もあり、そのようなネーミングを行うことになったということだ。その辺りさすが天下に名立たるMHD、ブランディング戦略は一流である。ちなみに例えば「ラサンタ」はゲール語で「温かさと情熱」を意味する。それぞれの言葉の意味はそれぞれについて触れる際に再度言及しよう。

 さらにこのエクストラ・マチュード、ウッドフィニッシュ・シリーズ時代とは製法も異なっている。このエクストラ・マチュードは度数を下げたオリジナルとは逆に度数を46度に上げ、ノンチルフィルターで作られているとのこと。ウィスキーを作る際は通常、樽由来の油脂分を取り除くため、摂氏4度以下まで一度冷やして油脂分を結晶化させ、濾過を行って取り除くというチルフィルターという処理を行う。これを行っていないと冷たい水で割った際などに油脂分が結晶化し、液体が白く濁ってしまうのでそれを嫌って行っている処理だ。ところがこのチルフィルター、油脂分と一緒にテクスチャと色という2つの魅力も一緒に少々ではあるが奪ってしまう。グレンモーレンジは今回このチルフィルターによるテクスチャと色の(僅かばかりの)減衰は、個性を大事にするエクストラ・マチュードには命取りだと考え、他蒸留所と比べてもオフィシャルのモルトとしては珍しく、ノンチルフィルターで瓶詰めする道を選んだ。そしてそれを実現するために度数を46度に上げたとのことだ。今回のこの決断が、エクストラ・マチュードの品質向上に大きく貢献することとなる。

 大分長くなってきたので続きはまた明日。

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  • 2015年01月08日 15:33
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