2005年11月19日(土曜日)

免許の更新と『アルハンブラ宮殿の思い出』

 富山に行くのにかこつけて代休を取得した先週の金曜日、免許の更新期限が迫っていたので富山に行く前にまず朝6時半に起きて二俣川まで免許の更新に行ってきました。前回の更新の際は日曜に行ったのですが信じられないくらい人が多くて辟易としてしまったので、今回は平日に行こうと心に決めていたのです。やはり平日は日曜と比べると格段に人が少なく、8時半くらいから並び始めて10時半前には新しい免許を手に運転免許試験場を後にすることができました。

 さて、私の免許は実は前回まで「眼鏡着用」の条件がない、その気になれば裸眼でも運転ができる免許でした。最近は仕事でもずっと眼鏡かけてるし、会社の健康診断でも裸眼で運転できる程の視力は出てなかったように記憶しているので、今回は「眼鏡着用」の条件を追加してもらおうと思っていたのです。視力検査の際、係員の人に「今回は眼鏡着用でお願いします」と言うと、係員の人は「そう?でもまぁまず裸眼から測ってみましょうか」と笑って返します。仕方がないので眼鏡を外して「右、下、下・・・」と適当に答えていきます。するとちょっとして係員曰く、「うん、見えてるね。裸眼でいいですよ」。ほう。

 ・・・今回もまだ裸眼で免許を更新できました。

 さてその後、この5年以内に駐車禁止違反が一回ある私は一時間の一般講習を受けるわけですが、そこで観る映画がなかなか熱かったのです。父母に子供三人という家族の母親が交通事故に遭うところから始まり、SE(と思われる)父の多忙な仕事の合間を縫ってのほとんど寝ずの生活の看病にも関わらず母が死んでしまい、その後父が仕事をしながら中学生の長男、小学生の長女、幼稚園の次男を男手一つで育てていこうとするというストーリー。父の忙しい仕事に気遣い、話したいことも話せずにすれ違う長男、母になら言えたことも父には言えずに苦しむ長女、まだ小さくて手のかかる次男、そんな状況の中家族はすれ違い、最後は次男が父方の実家の祖父母の元に引き取られて家族が離ればなれになっていきます。交通事故に遭った家族のその後の悲惨さをこれでもかというくらいフューチャーした、暗くて重い映画です。

 ところで、私がここで話題にしたいのはこの映画の内容ではありません。その中で使われていた音楽についてです。母が亡くなってしまった際、火葬場からの帰りに次男が「お母さんの所へ届け」と紙飛行機を投げます。その際、静止する中空の紙飛行機のバックグラウンドに、おもむろに音楽が流れ始めます。哀愁溢れるクラシックギターのトレモロの旋律。そう、『アルハンブラ宮殿の思い出』です。「アルハンブラかよ!」と心の中でかなりツッコミ入れました。

 この映画の中でこの曲は母のテーマソングとして扱われるらしく、父、長男、長女、次男それぞれが母を思い出す際、ピアノ編曲版や歌唱曲版など、様々に形を変えながら流れてきます。例えば長女。日記に「辛い時はお母さんが好きだった歌を口ずさんでがんばっています」と書いて、おもむろに窓を開けて歌を口ずさみ始めるわけですが、その曲もやはりアルハンブラ。いや、口ずさまねーよ!アルハンブラを好きなのはいいけど、それを鼻歌って無理があるだろ!音程が高く跳躍するところ辛そうだし!・・・なかなか、素敵です。アルハンブラが好きだった母、一体何者でしょうか。自分でギターを弾かないのに子供にまで「お母さんが好きな曲」としてアルハンブラを印象付けるのはまずありえないでしょうから、何かしらギターとは関わりがあったのでしょう。亡くなった時点では専業主婦で、結婚前は出版社に勤めていたという情報が映画の中で出てきました。とすると仕事がギター関係ということはないでしょう。やはり学生時代に弾いていて、仕事を辞めて専業主婦になってからまた趣味の一つとして再開したとか、そんな感じかと思われます。なかなかやります。まぁ映画の中にギターの映像は一度も出てこなかったわけですが。

 しかし『アルハンブラ宮殿の思い出』ってそんなに悲しい曲でしたでしょうか?映画の中で聴くアルハンブラの主旋律は、何だか妙に神妙で悲しく聴こえたのです。あの曲って確かにギターらしい哀愁はあるけど、悲劇的ってほどの重い悲しみは持っていない印象だったのですが・・・。やはり音楽を聴く際その裏にある背景というのは印象に大きく違いを与えるものです。おかげであれ以来、アルハンブラの旋律が私の耳を離れてくれません。これまで(あれだけ曲を弾いてきたにも関わらず)アルハンブラだけは明確な意志を持って弾かずにいた私ですが、最近ちょっと弾いてみようかななどと思ってみたりもしています。私にそのような心境の変化をもたらしてしまうとは運転免許の更新時講習、恐るべしです。

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