2005年09月09日(金曜日)

EXPO 2005『愛・地球博』- タパス・バー/BBC/欧州北部

 ようやく日差しが落ち着いたグローバル・ループをグローバル・コモン2から3へと進みます。グローバル・ループには熱射病予防のためか、ところどころにアーケードのように道に屋根がかかり、そこから霧状に水が吹き出て少し涼めるところがあります。余程暑いのか、連れはそれを見つけると必ず寄っていって霧を浴びて涼みながら歩いていきます。・・・そんなに、暑かったんでしょうか。まぁいいですけど(笑)。そしてそうこうしているうちにグローバル・コモン3に辿り着きます。ここは私達のお目当てであったスペイン館の他、イタリアやドイツ、フランス、トルコにモロッコと日本人好みな欧州諸国が群れをなす地域です。自然日本人共が集まります。いやー、どこも見事に混んでる混んでる。「15分以上並ぶところには行かない」という我々のポリシーに照らすとどこにも入れません(苦笑)。とはいえ今回のお目当てはパビリオン自体ではなく外に別建てであるタパス・バーです。まだ4時半と夕飯時にはやや早いこともあって、そちらは大して混んではいません。とはいえ、我々の標的である『スターシェフメニュー』は夕方5時以降提供開始。それまでの間チュニジア館をのぞいてちょっとしたアクセサリを購入してみたり、ロボットがボールを操るパントマイムの大道芸を眺めたりして時間を潰します。そして時は5時前。さぁ、スペイン館タパス・バーです。

 とりあえず今回の目的である『スターシェフメニュー』の説明をいたしますと、スペインの三ツ星シェフを含む超有名シェフ13人が作った料理を一品ずつ食べられるというもの。お値段も3,500円と比較的お手頃で、スペインで彼らの料理をこれだけの安価で食べられることはまずないとか。5時前に並んだ我々は、ほとんど待つことなく席を確保し、この料理をオーダーすることに成功しました。何にせよ、まずはどんな料理かご覧いただきましょう。

スターシェフメニュー

写真のNo. シェフの名前 所属レストラン、 下段 お料理の名前
1. Toño Pérez (Atrio)
Bolsitas Crujientes de Gambas y Puerro えびとねぎのパリパリの包み袋
2. Juan Mari Arzak (Arzak 3ッ☆)
Mejillones con Cortezas ムール貝と豚皮のチップ
3. Joan Roca (El Celler de Can Roca)
Terrina de Sardinas y Piquillo, Caramelo de Aceitunas Negras
いわしとピキーリョピーマンのテリーヌ、ブラックオリーブのカラメル
4. Oscar Velasco (Sant Celoni)
Sofrito de Tomate y Cebolla con Apio Nabo Crujiente
トマトとたまねぎの炒めもの、カリカリのセロリ大根添え
5. Ferrán Adriá (El Bulli エルブジ)
 Bocadillo Ibelico イベリコハムのサンドイッチ
6. Martín Berasategui (Martín Berasategui)
Mejillones para Picas ムール貝のおつまみ
7. Andoni Luis Aduriz (El Mugaritz)
 Tostas Gratinadas de Queso チーズのグラティネトースト
8. Santi Santamaría (El Raco de Can Fabes)
Toffee トフィー(デザート)
9. Hilario Arbelaitz (Zuberoa)
Txipiron Cuisado ほたるいかの煮込み
10.Pedro Subijana (Akelarre)
Irlandes de Lentejas y Sisas レンズ豆とシサス(春きのこ)のイルランデス
11.Josep Barahona (L'estudi)
Buñuelos de bacalao con Crema Romesco 鱈のフリット ロメスコソース
12.Carme Ruscalleda (Sant Pau)
Montadito de Anchoa アンチョビーのオープンサンド
13.Manuel de la Osa (Las Rejas)
Pisto de Feria con Magro de Cerdo 豚の背肉のピスト デ フェリア

 これがまたおいしかったのです。ほら、見るからにおいしそうでしょう?料理のおいしさをうまく言葉にする術を知らないのが悔しいのですが、本当においしい。特に6のムール貝のおつまみや10のレンズ豆とシサス(春きのこ)のイルランデスなどまさに絶品。連れ曰く「生きててよかったって思った」というこの料理は、普段"食"に対して強い執着をほとんど抱かない私ですらこれは凄いなと思わせるくらい素晴らしいものでした。これほどの料理には本当になかなかお目にかかれません。おそるべし、スペインのスターシェフ達。そしてその料理をシェリー酒でいただいて(スペインならワインかシェリーだなと思い、ワインは気分じゃなかったのでシェリーにした)、ちょっと早めの夕飯を済ませて心身共に栄養補給をしたのでした。なるほど、おいしい料理は人を幸せにします。皆さんも万博に行くならこの『スターシェフメニュー』は絶対お薦めです。是非食べてみましょう。

 そして幸福な余韻を愉しみつつ、またグローバルループに出て腹ごなしもかねてグローバル・コモン4の方に歩いていきます。途中ベンチに腰を下ろしてチュッパチャップスをなめながら万博会場に沈んでいく夕陽を眺めたりしながら、それでも平和に進んでいました。そう、あの時までは。

 万博には当然のことながら外国の人もたくさん来ています。たとえ目の前をいかついTVカメラを抱えた数人の白人が自分に向かって歩いて来たとしても、別にそれは珍しいことではありません。そう、話しかけられるまでは。

「Can you speak English?」
「A little」

 この中学生の英会話のようなやり取りで始まった出来事は、その後しばらく私の頭を悩ませてくれることになります。聞けば彼らは英国BBCのTV取材チーム。私にインタビューに答えてくれないかと言います。まぁ聞き取りやすいきれいな英語を話す人達でしたので、これならそれ程苦労はするまいと私はインタビューに応じました。すると、インタビュアーの人は両腕を広げて気持ち前屈みになりながら、力強く私にこう質問しました。

「How do you think about Japanese technology?」

 ・・・ん?一瞬、思考が固まりました。「はう どぅー ゆー すぃんく ばうと じゃぱにーずてくのろじー」。・・・私は何を答えればいいのでしょう。返答に窮した私はとりあえず「技術そのものはいいんじゃないでしょうか」みたいな返答をした後、彼らの出方を見ます。聞くと、どうやらトヨタの企業パビリオンで出ているロボットなんかのテクノロジーについてどう思うか聞きたいらしいのです。・・・はっきり言ってわかりません。だって見てないし(爆)。こっちゃ企業でなくて国ばかり回ってるのです。だってこれは"万国博覧会"だろ!? メインは国だろ!? なので私は「さっきロボットのパントマイムは見てきたけど、トヨタのロボットは見てないっすよ」と答えたら、インタビュアーもカメラマンも笑って「OK」と取材を切り上げてくれました。・・・しかしですね、今でも思うのです。彼らの最初の質問である「How do you think about Japanese technology?」。これに私は果たしてどう答えるべきだったのでしょうか?謎は深まるばかりです。

 そのいきなり英国BBCからインタビューを受けるという珍事の後、気を取り直してグローバル・コモン4に辿り着きます。ここでは北欧共同館や私の残りもう一つのお目当てであるアイルランド館なんかを見て回ったわけです。アイルランド館はケルト紋様が神秘的なハイ・クロスを間近で見れて記念撮影をできたのはよかったのですが、肝心の音楽の展示がごく小さい一角のみだったのが残念。フィドルやバグパイプといった、私の期待を膨らませる楽器達の展示はあったものの音楽そのものの演奏はなし。非常に残念です。アイルランド土着のケルト文化から引き継がれた神秘的で瞑想的な一面と、酒場で踊りながら奏でられる陽気で躍動的な一面。アイルランドの音楽はその複雑で痛みに満ちた歴史を象徴するかのように両極端な個性と様々な色を見せてくれます。是非、その生演奏を聴きたかったのですが。

 イギリス館はさながら小さな自然科学博物館といった趣で、昆虫や植物の生態を模した様々な科学技術や、英国風庭園の中にちりばめられた気鋭の芸術家達の作品が英国らしい気品を感じさせる仕上がりでした。科学好きの子供だったらきっとたまらないことでしょう。きっと小学生の頃の私だったら数時間居着いたに違いありません。なかなか悪くはなかったです。

 この時点で大体もう時間は18時半。もう日も暮れて完全にではないにせよ暗くなっていましたし、さすがに足も疲れてガタガタです。そろそろ帰りの方に向かおうかということで、我々はキッコロゴンドラに乗って出発地点近くまで一気に戻ることにしました。

続く(次回はキッコロゴンドラ/シンガポール館/万博からの帰路の予定です)

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