2004年10月19日(火曜日)

ボウモアの作法

 これはある程度どうでもいいことで、しかも完全に個人的な趣味の話。

 ボウモアはよく言われるようにドライな海の香りや適度なスモーキーさといったバランスのとれた、非常においしいウイスキーだが、正直一杯目に飲んでおいしいウイスキーではないと思う。それはその味わいが、マッカランやクラガンモアに代表される華やかさや甘みやまろやかさといったわかりやすいおいしさでなく、控えめで渋い、ギターで言うなら歴史と伝統を重んじて最良の原料を手作りの真心で仕上げるステファノ・グロンドーナのような、静かな深みのある味だからかもしれない。あるいは確かに控えめではあるけれど、ある程度アルコールが回ってきて、ちょっとくらいの味の違いなら気にならないくらいに酩酊していても、口に入れた瞬間に「ああ、これはいいな」とわかるその深みからなのかもしれない。とにかく、ボウモアは一杯目に飲んで真価がわかるウイスキーではない。ビールでも日本酒でも焼酎でも何でもいいが、とにかく何杯か飲んで酔いも回った頃に、おもむろに一杯飲むのがいい。どんな酒をどれほど飲んだ後でも、ボウモアはその控えめな個性と内に秘めた深い懐でそれを口にした人間を導いてくれる。大事なのは、決して一杯目にはボウモアを選ばないということだ。

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