2004年05月18日(火曜日)

『サーカス』中原中也

幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
  今夜此処での一と慇盛り
    今夜此処での一と慇盛り

サーカス小屋は高い梁
  そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒さに手を垂れて
  汚れ木綿の屋蓋のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
  安価いリボンと息を吐き

観客様はみな鰯
  咽喉がなります牡蠣殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

     野外は真っ闇 闇の闇
     夜は劫々と更けまする
     落下傘奴のノスタルヂアと
     ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

『サーカス』中原中也

6-7行目:一と慇盛り→「ひとさかり」
11行目:頭倒さに→「あたまさかさに」
12行目:屋蓋→「やね」
15行目:安価い→「やすい」
17行目:咽喉→「の(ん)ど」
19行目:真っ闇 闇の闇→「まっくら くらのくら」
21行目:落下傘奴→「らっかがさめ」

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